年金を考える
厚遇されている国民年金と、冷遇されている厚生年金の落差を思い、涙する。
お勤めの方なら「労使折半」をご存じですか?ご存じ無いのなら、ご一読下さい。
驚異的なリターン
国民年金は最強の「金融商品」です。 世の中には株や投信等の様々な金融商品が販売されていますが、国民年金ほどの旨味はありません。 もう、ボロ儲けで、ゼロ・リスクです。 こんな事を書くと、「こいつバカか」と怒られるかも知れませんが、本当です。
話を簡単にするため、次の条件で考えますね。(毎年、微妙に金額が変化するので)
保険料:15千円、加入期間:40年(480ヶ月)、
支給額:60千円
つまり、4倍のリターンがあります。 これは奇跡的な数字です。
皆さんはテレビで、FP(ファイナンシャルプランナー)が資産運用について解説している番組をご覧になった事があるでしょう。 彼らは皆、判で押した様に同じセリフを発します。
それは「もしこの金融商品を年利3%で運用できれば・・・」という「たられば論」です。
仮に、3%で40年間積み立てるとどうなるでしょう。
楽天証券の「積立かんたんシミュレーション」で計算してみます。
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/saving/simulation/compare.html
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積立のみで総額:720万
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3%運用:1389万(1.92倍)
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5.9%運用:2907万(4.03倍)
3%の積立でも2倍にしかなりません。 4倍にするのは5.9%で運用しなければならないのです。 世間には、1万を6%で運用できる輩はゴロゴロ居ます。
でも、年金約56兆を40年間6%で運用できる人間は皆無です。

仕送り
では国民年金は、どうやって4倍もの運用益を達成しているのでしょうか? 確かにGPIFという、年金を市場運用している機関はありますが、GPIFだけでは全ての年金を賄えません。(GPIFの運用資産約200兆。年金3.5年分くらい。)(注1)
年金の基本は、「若者から老人への仕送り」です。 加入者から徴収した保険料を、受給者に支給する訳です。 それが「仕送り」と呼ばれるゆえんです。
特に厚生年金(サラリーマンが加入)は、ぼったくられています。 案外と知られていないのですが、サラリーマンが払った保険料と同額を、会社も払っています。 「労使折半」ですね。 ゆえに会社の立場では、
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私に支給する「労務費」
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年金事務所に払う「社会保険料」
この2つを負担します。 しかし実質どちらも「労務費」です。 なぜなら、
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私に支給する「労務費」
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年金事務所に払う「社会保険料」
⇒私を雇用する事で発生した費用
⇒つまり「労務費」
ゆえに、本来的にはサラリーマンの給与はもっと高額となる訳です。 では、労使折半分を給与に上乗せで支給し、全額サラリーマン負担で厚生年金を払おうとすると・・・
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所得増となるので、所得税も増してしまう。
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対策として、所得税の社会保険料控除を上げる。
私はこれが本来の姿だと思いますが、厚生年金保険料が給与の18.3%と、丸見えになるので、負担感は半端ないですよね。 ただ、これを実施するには、厚生年金法の改正が必要です。 しかし、政治家サイドは「寝た子を起こすんじゃぁねえよ」、と断固拒否ですね。
そんな訳で、これからもずっと「労使折半」は維持され続け、多くサラリーマンが自分の「本当の給与」「本当の社会保険料」を知る事なく現役を終えてゆくのです。
それにしても、折半とは上手い方便です。
元を取るには
私は30年間のサラリーマン生活で1400万の年金保険料を納めました。 これは「ねんきん定期便」に記載されています。 ところが会社からの納付額を調べる方法が見つからないのです。 もし、あなたが会計課の担当者と仲良しならば、こっそり教えて貰えるかもしれませんが、まぁ、ヤメといた方が良いでしょう。(アクセス・ログが残るため、担当者に迷惑がかかるリスクあり) 折半が法律に明記(注2)されているので、素直に「会社も1400万を納付した」とします。
(注2)厚生年金保険法 第八十二条
被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。
その上で、何年生き延びれば元がとれるかを計算します。(私の場合15万/月の支給を想定します。)
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厚生年金の場合:(1400+1400)/15/12=15.5年
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国民年金の場合:720/6/12=10年
厚生年金は16年も生存しないと払い損です。 81才です・・・平均寿命(81.05)と一致します。 しかも、(1400+1400)/30/12=7.8万円/月の年金保険料ですから、「2倍のリターン」しかありません。 一方の国民年金は、4倍のリターンが得られ、しかも10年で元が取れるのです。
あぁ、なるほど。 前述の「労使折半を知らない人」から見れば、厚生年金は
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1400/15/12=7.7 年で元が取れ、
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1400/30/12=3.9 万/月の保険料ですから、
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15/3.9=3.8 倍のリターンに見える。
これだと、国民年金とほぼ同じに見える訳ですね。
・・・って、結局ぼったくられてるやん! トホホ。
何事も、知らないって事は恐ろしいですね。
こんな一方的に有利な金融商品、民間には作れません。 国だからできるのです。 そしてサラリーマンが、国民年金を支えていると分かります。
結論
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国民年金は最強の「金融商品」
ただし、50年以上生き延びることが前提(納付40年、受給10年)
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『年金の 陰に涙の 勤め人』
国民年金の未加入・未納付
・・・と、ここまで書いてきて、空しい気持ちになりました。 こんな好条件の国民年金でも、未加入・未納付が百万人もいます。 自分で貯金や運用で稼げるとでも思っているのでしょうか? いいえ、「生活保護狙い」ですね。(全員では無いですよ。2割という調査(注3)もあります)
言い分は、
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一生懸命、国民年金を納付し受給できたとしても、これだけでは生活は苦しい。
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貯金+運用、なんてもっと面倒だ。
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じゃあ、生活保護だ。
こんなところでしょう。 こんな損得勘定に長けた無気力で強欲な人達が生活保護予備軍に居ます。 しかもこの予備軍、扱いを誤ると闇バイトの人材供給源になります。 この様に、長期的には日本の社会コスト増大は避けられない情勢です。
またサラリーマンが標的にされるのか・・・
国がやるべき事は次の通り
「国民年金vs生活保護の格差是正」
ずーっと指摘されて来たテーマですが、進展ナシです。 そもそも原資が無いんですからどうにもなりません。 下記を実施し、財政を立て直すのが肝要です。
「国民年金の徴収強化・生活保護Gメンの強化」
行政には頑張って貰いたいですね。 でも肝の据わった未納者と対峙するのは、育ちの良いお役人には骨の折れる仕事です。 でも強力な人材が居ます。 元反社で社会復帰に苦しんでいる人達です。(彼らのリーダーには退官した元刑事を充てます) 元反社の人々は貧困や暴力を経験して来た苦労人です。 社会の暗部を目の当たりにして来た彼らこそ、未納者と共感し、納付へと導く能力があります。 元反社に誇りある役割を与え社会復帰を促し、そして貧困家庭を再生産させない。 これが「社会保障」(先回り対策)です。
「国民年金の所得連動」
裕福な1号被保険者(国民年金)から所得に応じた保険料を徴収するのです。 国民年金には裕福な人、そうで無い人、様々な人が加入しており、格差甚大です。 これで、保険料一律で15千円ではバランスが悪いですよね。 歴史的には、個人事業主の所得を捕捉するのが困難なので、一律の金額となったそうです。 でも、確定申告をしているのですから、ある程度所得は把握できるんだけどなぁ。(インボイス制度の導入は、ココを狙ったものか?) 農業団体の政治力も侮れないですよ。 自民党の大票田ですからね。(個人の見解)
あまりに人数が多過ぎで、個人差が有過ぎるので年金事務所が対応できない、という現実もあるでしょう。 サラリーマンの場合は、放っておいても企業が計算書作成と振込みをしてくれるので、年金事務所は左団扇で居られる訳です。 なんか、だんだん腹が立ってきました。 もっと働け、年金事務所!
ところで、人気芸能人、一流スポーツ選手、人気漫画家・作家。個人事業主でも稼いでいる人は沢山います。 彼らは夢を売る商売なんですから、成功を収めた後は、高齢者を支えるヒーローの役割を担うべきです。 大谷さんなら何千人の老人を養うことが出来るでしょうか?
そこで、こんな一案。
「野球の殿堂」があるんですから、「年金の殿堂」を作りましょう。 そう、多額の年金保険料を納めて下さった方々の社会貢献を顕彰し、広く国民に周知するのです。 彼らにしてみれば、憤懣遣る方無い年金保険料ですが、祭り上げる事で少しでも溜飲を下げて貰うのです。
「えっ?何? オレ、殿堂入りしちゃったの? しょーが無いなぁ、トホホ・・・」と苦笑いしつつも、名誉な事でもあり納得度はやや上向く訳です。(と思う)
国民年金だけでは暮らせない
とは言っても、月額6万で生活するのは難しいです。 単身なら住居費だけで消滅です。
しかしですよ、たった15千円/月の保険料で、老後は遊んで暮らせる、と考えるのも過剰な期待です。 こんな途方も無い期待は捨てて、堅気になって下さい。
不足分は自分で貯金・運用するのです。 それに65才まで待たないと、年金は入手できないので、そもそも貯金ゼロでは暮らせません。
シミュレーションしましょう
前述の、楽天証券の「積立かんたんシミュレーション」で説明した通り、「40年,3%で運用」できれば約2倍のリターンとなります。 「たられば論」ですが、楽観論にせよ、悲観論にせよ、なんらかの基準は必要です。 そこで、「40年,3%の運用」を基準にします。
以下、この「40年,3%の運用」を「2倍運用」と呼びましょう。
仮に、1万円/月の積立で「2倍運用」するとどうなるでしょうか?
926万円です。 この金額なら、毎月2万円を取崩しても、ほぼ40年(38.6)使えます。百歳超えですよ。
平均年齢まで生きるのであれば、毎月4万は使えます。国民年金と合わせて10万です。
同様に、
2万円/月積立で「2倍運用」。平均年齢まで生きれば8万。 合計:6+8=14万/月
3万円/月積立で「2倍運用」。平均年齢まで生きれば12万。合計:6+12=18万/月
いいじゃないですか。 光が見えて来ましたよ。 でも毎月3万って、若い人にはちょっとキツイかなぁ。
では、こうしませんか。
「毎月、最低でも2万円積立てる。余裕があれば3万を目標に積立てる。」
これなら、14万~18万がゲットできるかも知れません。
家計簿をちきんとつけて、理系節約術を駆使して、しっかり積立てて下さい。 ご健闘を祈ります。
・・・え? 運用方法が分からない? 難しい質問です。 参考にはならないとは思いますが、「資産運用どうするか」の頁をお読み下さい。

(おわり)